6. 「時計の針」を英語で言うと? — 多義語の覚え方
辞書を引くとわかりますが、意味が一つしかないような単語はむしろ少なく、ほとんどの単語には二つ以上の意味があります。しかも、やさしい基本的な単語ほどたくさんの意味があります。 つまり、多義語なのです。多い場合には一つの単語に十も二十もの意味があります。
これらの意味をお互いに何の関連もつけずに覚えこもうとすると、たいへんな努力が必要ですし、またせっかく覚えても、相互の関連がついていないとすぐに忘れてしまいます。 したがって、多義語の意味は、相互に関連づけてて覚えるようにする必要があります。
それでは、単語の意味を相互に関連づけるとはどういうことなのでしょうか。 それは、その単語の本来の意味のいろいろな広がり方についての知識をもつということで、言い換えれば、中心的な意味とそれから派生した意味との関係を知るということです。 基本的な単語の意味を一つ一つみていくと、意味がたくさんあっても、たいていは、核となる意味があって、そこからいろいろな意味に枝分かれしていることに気づくはずです。
例えば、だれでも知っている hand という語を辞書で引いてみると、「手(手首から先の部分)」「(時計の)針」「人手、働き手」「筆跡」といった意味が記されています。 一見すると、お互いに無関係な意味が並んでいるようですが、そうではありません。 hand は、「手」とその形が似ていることから「時計の針」を指し、「手で書いたもの」として「筆跡」、人は主に「手」で仕事をすることから「働き手」という意味にもなるのです。
もう一つ例を挙げます。charge という語も辞書を見ると、一見ばらばらな意味がたくさん載っていますが、「車に荷物を積み込む」というのが本来の意味です。 そこから「荷物を積むように何かを負わせる」という比喩的な意味が派生しました。 支払い義務を負わせることから「料金を請求する」、道義的責任を負わせることから「非難する」、防御の負担を負わせることから「突撃(突進)する」、「バッテリーなどに充電する」といった意味になるのです。
このように、意味の流れを要領よくつかんで覚えることが大切です。そのためには、やはり辞書を引くことが一番です。 しかも、辞書を引いて必要な訳語だけを見つけてそれでおしまいするのではなく、辞書の記述全体にわたって目を通す習慣をつけることです。辞書は引くものではなくて読むものであるという意識をもつ必要があります。
多義語はできるだけ意味の展開をつかんで覚えるようにすること