まな板が英語で言えない
このようなサイトを作ることを思いついたのには、おそらく私個人の遠い(?)過去の体験があるように思います。 それは私が大学に入学して初めての夏休みに帰省をしたときのことでした。
お昼近くになってようやく起き出し、自室から階下のキッチンへと降りていった私に向かって、唐突に母が言いました。
「これって、英語で何て言うの?」
「これ」というのは、まな板でした。
「えっ!」
すっかり意表を突かれ、私は言葉に詰まってしまいました。
私の口から言葉が出てこなかったのは、とても単純な理由からでした。そのときの私には、「まな板」のことを英語で何と言えばいいのかわからなかったのです。
allusion(ほのめかし)のような難しい単語なら知っているのに、キッチンに入れば必ず目にし、当然それがどういうものなのかをよく知ってる「まな板」、 一人暮らしを始めて自炊をするようになってからは、自分でも使っている「まな板」を英語で何と言うのかも知らないとは…。
そして次の瞬間、自分の周りには、英語でどう言ったらいいのか分からないものがたくさんあふれているという現実に気づき愕然としたのです。
母は、聞いてはいけないことを聞いてしまった、とでもいうふうに、すぐに話題を変えてしまいました。 しかし、私自身は、大げさな言い方をすれば、日本のいわゆる受験英語のひずみというか、ゆがみのようなものを、自分が体現しているような気がして、この日のことは苦い思い出として深く心に残りました。
受験英語の問題点
その後、高校生だけではなく、社会人の方にも英語を教えるようになって、多くの日本人英語学習者と接しているうちに、大学生当時の私と同じような悩みを抱えている方が少なくないことを知りました。受験勉強を一生懸命頑張った人ほど、この悩みは深いようでした。
大学入試の受験勉強時に、おそらく多くの方がいわゆる入試用の単語集で単語を覚えます。そして、入試では長文読解問題として論説文が多く出題されることを反映して、そのような単語集では、allusion のようなとても堅い抽象語がたくさん選ばれています。
しかし、日常生活の中で英会話をするとき、あるいは、ペーパーバックで小説を読むときに必要なのは、むしろ、具体的な事物を指す語やいわゆる生活語彙なのです。 そのため、大学受験を経験した多くの英語学習者は、英会話をする際に、このような語彙の圧倒的な不足という困難に直面し、新たにこの種の語彙を覚え直さなければならないのです。
身近なものから始めよう!
そこでこのサイトでは、身近なものなのに意外と英語では言えないもの、使い慣れたカタカナ語だけれども英語として通じるのか自信がないものなどを取り上げています。 そして、それを英語では何と言えばいいのかということを、記憶に残りやすい形で提示することで、多くの方々の英語学習のお役に立つことができればと考えています。